本人告知

兄クンへ障害告知をしたのは、3年生のときでした。

忘れもしない6/29(土)晴天。

 

兄クンは1年生のときにその傾向があると気付かされ、

2年生の冬に自閉症スペクトラム障害(ASD)・注意欠陥多動性障害(AD/HD)確定

との診断を受けました。

学習障害(LD)については継続診断と。

いただいた診断書の最後に「近いうちに、本人への特性の告知が必要ですので、参考

図書を熟読して準備しましょう。」とありました。

かかっている小児発達外来では、毎月保護者勉強会が無料で開催されているのですが

ちょうど診断を受けた前の月のテーマが「本人への特性の伝え方」でした。

勉強会の内容はおおまかに以下の項目でした。

・本人への告知の条件と目的

・告知の目的と効果

・望ましくない目的

・ベストな告知年齢は?

・本人の状況からみたベストなタイミングは?

・本人告知への準備ステップ

ほぅ!と思うものでした。

まさに今この時期!と兄クンにベストなタイミングだと思いました。

告知の準備にあたって熟読するように言われた書籍はこれです。

 

自閉症・アスペルガー症候群「自分のこと」のおしえ方 (ヒューマンケアブックス)

自閉症・アスペルガー症候群「自分のこと」のおしえ方 (ヒューマンケアブックス)

 

 読んでいて感動すら覚えます。

勉強会の内容ともほぼ一致していました。

 

兄クンの受診 - キラキラ、ヒカル。

 で紹介したような流れで、勉強会翌月の受診で告知準備を始めることとなりました。

告知に適した年齢は、一般的には自他の違いを感じ始める10歳前後と言われますが、

いくつかの支援が定着していて、その支援(ある特性に対する工夫)が

本人も自然に必要なものであると自覚していて自然に求められている状況があれば

私はそれより早い年齢でもいいような気がします。

そして、新たな困りごとが起きていなくて

割になんでもポジティヴに受け止められるような落ち着いた生活ができているときが

ベストタイミングなのかなと思います。

あとは内容です。

媒体は、本人の興味のあるもの食いつくものをと思い、

パソコンでパワーポイントを使って見せることにしました。

そして以前ワークショップにも出て学んだソーシャルストーリーズの技術?様式?で

説明をしていくことにしました。

ソーシャルストーリーズについては

 

ソーシャルストーリー・ブック 入門・文例集【改訂版】

ソーシャルストーリー・ブック 入門・文例集【改訂版】

 

 

 

ソーシャル・ストーリー・ブック―書き方と文例

ソーシャル・ストーリー・ブック―書き方と文例

 

 

 

お母さんと先生が書くソーシャルストーリー―新しい判定基準とガイドライン

お母さんと先生が書くソーシャルストーリー―新しい判定基準とガイドライン

 

 これらのような書籍を参考にして作ることができます。

読み取り方によって誤解や思い違いが生じないように、

作り手以外の目が必要になります。

2~3週の間に3回ほどDr.のもとへ通い、添削してもらいつつ仕上げました。

診断名までは伝えず、特性だけを知らせるという方もいると思いますが、

私はあえて「障害」とつく診断名まではっきり伝えて

「障害」についても正しく理解してほしいと思いました。

正しく理解できてない状況で、さらに正しく説明が得られない状況で

ふと診断名だけ知ってしまう…と言う事態を想像するだけでも怖くって。

もしか不安を感じてあれこれ自分で調べる中(インターネットも自分で使えるので)

正しい情報と正しくない情報をそのように判断して拾えるわけではないので

正しくない情報に振り回されて悲観する…なんてこと想像すると動悸や息切れが。

…って、心配しすぎかもしれませんが(^_^;)

で、準備を始めると完成するまでの間は

「告知までは他から知ることのないように!」と祈るように焦っていました。

さて、その内容ですが…

タイトルは「僕のこと」としました。

まず診断名ASDと。そしてその説明。

脳タイプとして説明しました。

少数派脳タイプ・多数派脳タイプとして。

例えとして、手の左利き(少数派)・右利き(多数派)についても説明しました。

施設も道具も環境も、多数派・右利きの人が便利に過ごせるように

整備されていることが多く、それは仕方のないことであって

少数派・左利きにとっては不便な世の中であるが、工夫や道具を使うことによって

その不便さはある程度解消できる、やりようでやっていける …

と言うようなことを、兄クンに理解しやすい言葉を選んで説明しました。

それから「ASD」とは「自閉症スペクトラム障害」とか「アスペルガー症候群」とか

いうこともあるってことを伝えました。

以前ツイッターでもつぶやきましたが、ここの「障害」って部分で兄クンの顔が

「えっ!」って曇るんです。

もちろん想定済みで、そこへの用意はしていました。

「障害って何にもなしじゃ不便があってできなかったり難しかったりする状態。

 工夫や道具で不便がなくなれば障害な状態ではなくなる。視力が低くて見えにくい

 人には視力障害があるって言う。合ってるメガネをかければ見えやすくなる。」

と、「障害」って言葉について説明すると、「あぁ。」と顔が晴れました。

 

「障害」とは何ぞやということをこの先も、正しく…というか、偏見なく…というか

 

間違ったとらえ方ではなく、変なニュアンスではなく、認識していてほしくて。

そして、あとはひとつひとつの特性を拾い上げました。

その時点で兄クンが自覚があるもの、そこに工夫や道具を活用してるもののみ数点。

始めに得意なポイントでいくつか(好きなことには夢中で集中できるetc.)

次に苦手なポイントでいくつか(集中してしまうとなかなか切り上げられないetc.)

その苦手なポイントについて工夫や道具で解消できていることでいくつか(タイマー

を使ったり、時間と次の予定を決めておいたりすると切り上げられるetc.)を

兄クンの顔写真を入れて吹き出しを作り、アニメーションで文章を入れたり

それぞれのシーンを撮った写真を入れたりして、

できるだけ兄クンがピンとくるように、特性とその工夫について紹介しました。

そして、

「これから起きるかもしれない困ったことや難しいことも、きっと工夫や道具でうま

 くやっていける。その工夫や道具については、家族やDr.に相談できる。」

と伝えました。

見ている兄クンの様子がとてもおもしろかわいかったです。

ひとつひとつに「あぁ。」「うんうん。」「そうそう。」「それでか。」と

身を乗り出してきらきらした顔で食いついてました。

超ポジティヴシンキングな兄クンがこれだけのことを知ったら

話したくてたまらない特性が働くのは当然で、

締めくくりには「大事なこと」として

「このことは僕のとても大切な情報。家族とDr.と担任の先生にだけ話す。」

ということと

「友達にも似たタイプの子がいるかもしれない。ASDのことを知った僕は、”この子も

 ASD かも”と気付くかもしれない。でもその子はまだ自分の脳タイプについて知らな

 いかもしれない。その子が自分の家族やDr.から教えてもらうまで、ASDのことは言

 わないであげよう。大切なことなので家族やDr.から聞いたほうが安心だ。」

ということを伝えました。

 

終えて、とってもスッキリしました。ホッとしました。

兄クンの顔もスッキリしているように見えました。

さらにホッとしました。

 

その後、もちろん大きく生活は変わるわけではありません。

それでも、自分のことを知っていて意識してしていることは

その後の成長の方向性は上を向いていくことは確かです。

支援もしやすくなり、何より本人が支援を受け入れやすくなると思います。

それからしか始まらないこともあるんじゃないかなと思います。

個人個人に合ったベストな方法、ベストなタイミングで告知を受け

ますます成長できる、喜べる人が増えたらいいなと思います。

 

 ※追記※

ベストなタイミングで告知が得られず、

告知で耐えがたい悲しみや苦痛 を避けられない方もあるかと思います。

過去の理不尽や苦労が多ければ多いほど。

その傷が少しでも小さくなり、少しでも早く癒えるような

前を向ける告知に

信頼できる支援者に

頼れるツール・工夫に

理解ある環境に

出会えることを祈ります。

 

告知後は、兄クンには届かない場所に隠していた本たちを

自由に読めるように本棚に並べておきました。

 

あたし研究

あたし研究

 

 

 

あたし研究〈2〉自閉症スペクトラム―小道モコの場合

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あなたがあなたであるために―自分らしく生きるためのアスペルガー症候群ガイド

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発達障害がある子のための「暗黙のルール」―〈場面別〉マナーと決まりがわかる本―

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マンガでわかる よのなかのルール (単行本)

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